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マイクロ法人の最大の目的は、多くの人にとって「社会保険料を抑えること」だと思います。でも、検索して出てくるのは制度の解説ばかりで、「で、実際に毎月いくら払ってるの?」という肝心の数字はなかなか出てきません。
なので、先に私の実額を出します。2021年からマイクロ法人(合同会社)を運営して5年目、現在の毎月の社会保険料はこうです。
| 項目 | 月額(労使合計) |
|---|---|
| 健康保険料(協会けんぽ・東京) | 8,721円 |
| 厚生年金保険料 | 16,104円 |
| 子ども・子育て拠出金 | 317円 |
| 合計 | 約25,100円 |
月あたり約25,100円。年間で約30万円。これが、国民健康保険と国民年金の代わりに私の法人が払っている社会保険の全額です(2025年度の実績、40歳未満なので介護保険料なし)。
この実額の前提
- 合同会社(マイクロ法人)のひとり社長。役員は私だけ
- 役員報酬は月87,999円(この金額の理由は後述)
- 標準報酬月額88,000円/協会けんぽ(東京)/40歳未満
- 数字は2025年度の料率に基づく私の法人の実績。料率は毎年少しずつ改定されます
社会保険料は「役員報酬の額」でほぼ機械的に決まります。だから前提さえ同じなら、あなたが作るマイクロ法人でもほぼ同じ数字になります。逆に、都道府県(健康保険の料率が違う)と年齢(40歳以上は介護保険料が乗る)で少し変わります。
なぜ役員報酬が「87,999円」という中途半端な額なのか
表を見て「なんで88,000円じゃなくて87,999円?」と思った人、いい勘してます。ここには2つの「壁」が関係しています。
壁①:月88,000円未満なら源泉所得税がゼロ
給与(役員報酬)が月88,000円未満だと、源泉徴収税額表(甲欄・扶養0人)での源泉所得税が0円になります。つまり毎月の源泉徴収事務と納付がまるごと不要になる。ひとりで経理を回している身としては、税額そのものより「事務が1つ消える」ことが大きい。だから上限ギリギリの87,999円です。
壁②:報酬を上げても、社会保険料は意外と増えなかった
実は設立当初、私の役員報酬は45,000円ライン(標準報酬月額58,000円の等級)に設定していて、当時の社会保険料は月約22,000円でした。その後、法人に利益が残りすぎるようになったので、報酬を87,999円まで引き上げました。
このとき社会保険料がいくら増えたかというと——月3,000円ちょっとだけです。
報酬を月30,000円上げたのに、社保は約3,100円しか増えない。カラクリは厚生年金の下限にあります。厚生年金の標準報酬月額は88,000円が最低等級なので、報酬が58,000円でも88,000円でも厚生年金保険料は同じ16,104円。変わるのは健康保険料の部分だけなんです。
つまり「報酬45,000円で最安を極める」のと「87,999円で源泉税ゼロの上限まで取る」のとでは、社保コストの差はごくわずか。月45,000円設定にこだわる意味は、思われているほど大きくない——これは実際に両方の設定で払ってみた実感です。
帳簿の上ではこう見える(freeeユーザー向け)
「労使合計25,100円」と言いましたが、社会保険料は建前上、会社と本人が折半で負担します。ひとり社長の場合はどちらも実質自分の財布ですが、帳簿上はきちんと分かれます。私のfreeeの帳簿ではこうなっています。
| 帳簿上の見え方 | 月額 |
|---|---|
| 法定福利費(会社負担分+拠出金) | 約12,700円 |
| 役員報酬から控除する本人負担分 | 約12,400円 |
| 口座から実際に引き落とされる額 | 約25,100円 |
毎月末に、年金事務所からの納入告知に基づいて法人口座から自動で引き落とされます。ちなみにこの「口座振替」、対応していないネット銀行が多いので法人口座選びの重要ポイントです。私は設立時にゆうちょ銀行の審査に落ちてSBIネット銀行とGMOあおぞらネット銀行の2行を開設したのですが、GMOあおぞらが社会保険料の口座振替に対応したのを機にメイン口座にしました(それまでは納付書で毎月手動払い。届くのが月末ギリギリで、実際に納付が遅れたこともあります)。この話は別の記事で詳しく書きます。
もし個人事業主のままだったら、いくら払うのか
正直に書いておくと、私は学生からいきなり法人を作ったので、「国保から切り替えて安くなった!」という体験談は持っていません。なのでここは体験ではなく試算です。
個人事業主が払うのは国民年金+国民健康保険。国民年金は2025年度で月17,510円(定額)。国民健康保険は前年の所得に比例して増えていき、自治体にもよりますが、所得が400万円前後あると国保だけで月3万〜4万円台になるケースが多い。合わせると月5万円を超えてきます。
マイクロ法人の二刀流では、社会保険は法人の役員報酬(87,999円)だけで決まるので、個人事業側でどれだけ稼いでも社会保険料は月約25,100円のまま動きません。ここがこの仕組みの核心です。個人事業の所得が大きい人ほど差額は開いていきます(具体的なシミュレーションは別記事で書く予定です)。
ついでに言うと、国民年金ではなく厚生年金に加入することになるので、将来の年金受給額は国民年金のみの場合より少し増えます。「払う額を抑えながら、2階建て部分も一応積み上がる」という位置づけです。
実額公開のうえで、注意してほしいこと3つ
① 役員報酬は「毎月同額」が大原則
87,999円と決めたら、原則その額を毎月払い続けます(定期同額給与)。変更できるのは基本的に期首から3ヶ月以内。「今月は売上が良かったから多めに」はできません。私が設立当初に誤解していたポイントで、詳しくは後悔と落とし穴の記事に書きました。
② 料率は毎年変わる(数字は生モノ)
健康保険の料率は都道府県ごとに毎年3月分から改定されます。私の帳簿でも、年度をまたぐと法定福利費が数十円単位で変わっています。この記事の数字は2025年度実績なので、あなたが計算するときは協会けんぽの最新の料率表で確認してください。
③ 40歳になると介護保険料が乗る
40歳〜64歳は介護保険第2号被保険者として、健康保険料に介護保険料率(約1.6%)が上乗せされます。標準報酬88,000円なら月1,400円程度の増額。私はまだ対象外ですが、40歳前後の人は見込んでおいてください。
まとめ:社会保険料は「読める固定費」になる
マイクロ法人の社会保険料は、役員報酬を88,000円未満に設定すれば月約25,000円(40歳未満・2025年度)で固定されます。所得が増えるほど際限なく上がっていく国保と違って、「読める固定費」になる。これが5年払い続けてきた実感です。
ただし、この仕組みは法人の維持費(年10万円前後)と事務負担、そして法人と個人の事業の切り分けが成立していることが大前提。そのあたりの現実は、こちらの記事に正直に書いています。
※本記事は筆者個人の実績(2025年度)と2026年7月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、税務・社会保険の個別助言ではありません。金額は料率改定や個別の条件により変わります。具体的な判断は税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。