「マイクロ法人 おすすめ事業」で検索すると、事業のリストがずらっと並んだ記事が出てきます。せどり、アフィリエイト、コンサル、投資、駐車場経営……。
マイクロ法人を5年運営している立場から、先に大事なことを言わせてください。「リストから選ぶ」という発想自体が、いちばん危ないです。この記事では、私が実際に法人に置いている事業の話と、事業選びで本当に見るべき3つの条件、そして「これはやめたほうがいい」まで正直に書きます。
私のマイクロ法人の事業は「業務委託契約」1本
実例として私の場合。法人に置いているのは、取引先1社とのWeb系の業務委託契約です。もともとこの契約のために法人を作ったので、事業を「選んだ」というより「あった」が正確です。それ以外の活動(メディア運営など)は全部個人事業側に置いています。
5年やって分かったのは、マイクロ法人の事業は派手である必要がまったくないということ。毎月数万円〜十数万円が安定して入り、実態を客観的に説明できる。それだけで、役員報酬(私は87,999円)を払い、維持費(年16万円)を賄い、社会保険の土台として機能します。
事業選びの条件は3つだけ
条件①: 個人事業と実態が分かれていること(最重要)
マイクロ法人が税務上危なくなる典型は、個人でやっている事業と同じものを形だけ法人に付け替えるパターンです。二刀流の大前提は事業の切り分けで、契約・請求・入金・仕事の中身が自然に分かれている必要があります(切り分けの考え方はこちらに詳しく)。リスト記事から「何となく良さそうな事業」を選ぶ前に、まず自分の今の収入源を棚卸しして「別の事業として説明できる塊が2つあるか」を見るのが正しい順番です。
条件②: 役員報酬+維持費を安定して賄える売上(月5万円が目安)
法人からは役員報酬(社保加入の前提)を毎月払い、維持費も出ていきます。売上がゼロの月が続くと、この構造が回らない。年間で見て「役員報酬×12+維持費」を上回る、変動の小さい売上——具体的には月5万〜10万円の安定収入が置けると設計が楽です。逆に言うと、大きく稼ぐ事業を法人に置く必要はない。大きく稼ぐ事業はむしろ個人側に置くのが二刀流のセオリーです(利益が法人に貯まりすぎると法人税の問題が出てきます)。
条件③: 自分が実際にやっている(やれる)こと
当たり前に聞こえて、いちばん軽視されている条件です。やったことのない「おすすめ事業」を法人設立のために始めるのは、実態の弱い事業をわざわざ作る行為で、続かないし説明もできない。すでにやっている活動の中から法人に置ける塊を探すのが、唯一まともなやり方だと私は思います。
よく挙がる事業例を、3条件で正直に評価する
| よく挙がる例 | 私の評価 |
|---|---|
| 業務委託・受託(制作、開発、コンサル等) | ◎ 契約が実態そのもの。売上も安定しやすい(私はこれ) |
| メディア・アフィリエイト運営 | ○ 実態は明確。ただし売上変動が大きく、個人側の事業と重複しないよう注意 |
| 不動産・駐車場などの賃貸 | ○ 安定性は最強クラス。ただし始めるハードルと資金が別問題 |
| 資産管理(株式・投資) | △ 実態の説明・税制の論点が多く、素人が独学で置く事業ではない。専門家案件 |
| 「節税のために何か始める」系全般 | ✕ 実態が目的に対して後付け。順番が逆 |
事業目的の書き方で悩みすぎなくていい
定款の事業目的は、実際にやる事業を素直に書けば大丈夫です。私は取引先から求められた業務をそのまま書きました。将来やるかもしれない事業を2〜3個足しておくのは一般的ですが、10個も20個も並べる必要はありません。定款の見栄えより、実際の売上の実態のほうが100倍大事です。
まとめ: 「何をやるか」より「何がすでにあるか」
マイクロ法人の事業選びは、新しく何かを始める話ではなく、いまの自分の収入源を2つの塊に整理できるかの棚卸しです。整理できる塊があるなら、あとは数字の問題(社会保険料がいくら変わるか)。塊がないなら、無理に作らず個人事業のまま育てるのが正解です。作ると決めたら、設立の実録と後悔しないための落とし穴をどうぞ。
【2026年3月の厚生労働省通知について】 2026年3月18日、厚労省は法人役員の社会保険の被保険者資格について、「役員としての業務が法人経営への参画を内容とする経常的な労務の提供であること」「報酬がその対価として経常的に支払われていること」を総合的に判断すると明確化しました(出典: 厚生労働省「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」、確認日2026-07-07)。直接の対象は他者の法人に形式的に役員として加入する「国保逃れ」スキームですが、自分で設立したマイクロ法人でも実態のある業務と、それに見合う報酬が前提になる点は同じです。形だけの法人・実態のない役員就任では社会保険に加入できません。
※本記事は筆者個人の体験と2026年7月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、税務助言ではありません。事業構成の適否は個別性が高いため、具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。