6月に届いた国民健康保険の決定通知書を見て、しばらく固まった——「高すぎる」でこのページに来たあなたは、たぶんそういう状態だと思います。
先に言っておくと、その感覚は正常です。個人事業主の国保は、所得400万円なら年40万円台、600万円なら60万円前後(自治体による)と、稼げば稼ぐほど、上限(年100万円超)まで青天井で増えていく設計になっています。会社員の健康保険と違って、全額自己負担で。
この記事では、なぜこんなに高いのかという構造の話と、フリーランス界隈で知られるようになった「マイクロ法人の二刀流」でこれがどう変わるのかを、当事者として書きます。
なぜ国保はこんなに高いのか
国民健康保険料は大きく「所得割(前年の所得×約10〜13%)+均等割(定額)」でできています。ポイントは3つ。
- 所得に比例して増える。控除は基礎控除43万円くらいしか効かず、頑張った年ほど翌年に跳ね返る
- 前年所得ベース。収入が減った年でも、前年に稼いでいれば高い保険料が来る(独立直後や不調の年に一番痛い)
- これに国民年金(2026年度は月17,920円)が別途乗る。しかも国民年金は厚生年金と違って2階部分が積み上がらない
「所得600万円のフリーランスが、国保+国民年金で年80万円近く払っているのに、将来の年金は会社員より少ない」——この構造への合理的な対抗策として広まったのが、マイクロ法人です。
二刀流にすると「保険料が所得に連動しなくなる」
仕組みはシンプルです。小さな法人(マイクロ法人)を作って社会保険(健康保険+厚生年金)に加入し、役員報酬を低く設定する。すると社会保険料は法人からの役員報酬だけで決まるので、個人事業側でいくら稼いでも保険料は一定になります。
私の実額で言うと、役員報酬を月87,999円に設定していて、社会保険料は月約25,100円(年約30万円)で固定。個人事業の収入が増えても、この数字は動きません(内訳と「なぜ87,999円なのか」はこちら)。国保のような「稼いだ罰」感から解放されるのが、金額以上に精神的に大きい。
正直に言うと、私は「国保が高い」を経験していない
フェアに書いておきます。私は学生のときに事情があって先に法人を作ってしまった(経緯はこちら)ので、国保の高さに苦しんだ当事者経験がありません。「切り替えて安くなった!」という体験談は書けない。
その代わり、毎年こう考えます。もし法人を作っていなかったら、今の所得だと国保+国民年金で年何十万円払っていたのか——試算するたびに、あのとき法人を作る羽目になって本当によかったと思う。あなたの所得だといくら変わるのかは、2026年度の実料率で作ったシミュレーターで30秒で分かります:
ただし、万能薬ではない
ここからが、このブログがいつも言うことです。マイクロ法人には年16万円前後の維持費と、決算・申告などの事務負担が確実に発生します。シミュレーターの差額が年20万円を下回るようなら、私は勧めません。マメな作業が続かない自覚がある人にも勧めません(後悔しやすい人の特徴はここに正直に書きました)。
それから、法人に置く「実態のある事業」が必要です。個人事業と同じ事業を形だけ法人に付け替えるのは、税務上のリスクを自分から作りに行く行為なのでやめてください。
法人を作らずに今できることも一応
法人化以外の手段については社会保険料を合法的に下げる3つの方法にまとめました。ここでは国保に絞って書きます。
- 国保組合を調べる: 業種によっては所得に関係なく定額の国保組合に入れる場合があります(デザイナー・ライター系の文芸美術国保など)。加入条件が合うなら、法人を作るより手軽な選択肢
- 収入が急減した年は減免・分納の相談: 自治体の窓口で相談できます。放置して滞納が一番損
- 経費と控除の見直し: 国保は所得ベースなので、正しい経費計上と青色申告特別控除は保険料にも効きます
まとめ
国保が高いのはあなたのせいではなく構造の問題で、その構造には合法的な対抗策があります。ただし対抗策にはコストと向き不向きがある。まずはシミュレーターで自分の数字を見て、差額が大きいようなら現実の落とし穴まで読んでから判断してください。数字と現実の両方を見て決めれば、後悔はしないはずです。
【2026年3月の厚生労働省通知について】 2026年3月18日、厚労省は法人役員の社会保険の被保険者資格について、「役員としての業務が法人経営への参画を内容とする経常的な労務の提供であること」「報酬がその対価として経常的に支払われていること」を総合的に判断すると明確化しました(出典: 厚生労働省「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」、確認日2026-07-07)。直接の対象は他者の法人に形式的に役員として加入する「国保逃れ」スキームですが、自分で設立したマイクロ法人でも実態のある業務と、それに見合う報酬が前提になる点は同じです。形だけの法人・実態のない役員就任では社会保険に加入できません。
参考(公式情報): 練馬区「国民健康保険料の計算方法(令和8年度)」、日本年金機構「国民年金の保険料」(いずれも確認日2026-07-07)
※本記事は筆者個人の体験と2026年7月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、税務・社会保険の個別助言ではありません。保険料は自治体・年度・世帯構成で変わります。個別の判断は専門家・自治体窓口にご確認ください。